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Vol.17
美 artとは?「美」の本質を問う
鎌田 恵務
​彫刻家
​2026.March

慶應義塾大学の今井むつみ教授は、言葉の意味を真に受け取る、理解するには認知科学の「記号接地」身体的な感覚を持ってその意味を理解する。

身体の感覚と結びつく必要があると語られ、「意識」と「感覚」の乖離の問題が世界中で起きていると見解・警鐘をされておられます。
 

この状況は「Generative AI(生成 AI)」の出現によって、同様に、「art」芸術の世界でも起きてないでしょうか。
芸術的体験を構成している擬似体験や教養体験等、アイステーシス aisthesis(古代ギリシアの言葉で、「感性」を意味する言葉。感覚から感情までを含む広義の「知覚」を意味する)のもと、私達は身体的な感覚により、アートに触れています。人は、「美しい」と感じたり、思うことが、いろいろとありますが、これらを「美的経験」と言うならば、美的経験はまさしく感覚に訴えるものであり、身体の感覚と結びつく。身体と共に考えている。いわゆる、「身体として考えている」のです。そのような中、身体との繋がりが断たれた時、それは、「人間不在の美」「人間不在の芸術」と言うことに化します。


古来より、人間を人間たらしめる至言としてプラトンやカントの「真・善・美」また、孔子「論語」の『興於詩、立於禮、成於楽』(詩によって思いを興し、礼儀によって自立し、美しい音楽によって人として完成するー素伯第08ー)は、人間の「文化活動」つまり「理念」として美を捉え、考え、感受し、私達は「美」を人間の「希望」、「恵」として人生を歩んで来ました。

また、近代よりフランスの美学者達(スーリオ・デュフレンヌ)は、洋式史・精神史・歴史と共に、身体による感覚(視覚・聴覚・触覚)の現象学を通しての「美」を執拗にまでに考察され、芸術哲学である「美学」を研究、構築され「美」を問うて来ましたが、昨今、「アート」の現況も、生成AIの出現によって、冒頭の今井むつみ教授が警鐘される言葉の乖離同様に、身体の感覚と結び付く「意識」と「感覚」の乖離といった状況が起り、そのことにより高次の美的、芸術体験が求められる実態となっているのではないでしょうか。


これまでは、芸術として、または画論として、「歴代名画記」の張彦遠(ちょうがんえん)の画の六法として、

(一)気韻生動:生命力   

(二)骨法用筆:素描力・線

(三) 応物象形:描写力・形 

(四)髄類賦彩:彩色力

(五)経営位置:構成力  

(六)伝移模写:模写

をあげ、芸術美の世界(技・術)を名示し、さらに、芸術の理念として、「形似の外を以て其の画を求む」と模倣的再現(ミメーシス)から、情思(心の思い)を輝き出すこと、「写意」(表現)を尊ぶ事を何よりも重んじ、写意(表現)を真中とした多くの作品が生み出されてきました。さらには、昨今、作品の鑑賞に留まらず、鑑賞者自らによる作品への参加、作家と共に創出する「アート」。また、芸術の社会的機能としての「アート」(教育・地域活性化・QOL・障がい者支援・就労支援等として)が尊ばれ、取り組まれています。この芸術の社会的機能の一つとしての「アート」の世界に、生成AIが取り入れされる際に起きるデメリット、つまり、リスクを十分に考慮する必要が求められてはいないでしょうか。例えば、「アート」を障がい者の就労支援として活動されている事業所等にとって、生成AIはビジネスとして、彼らの活動に大変優れた有効なシステムとなると思われます。しかし、それに伴うリスクへの配慮も常に留意しなければならないと思われます。

 

「芸術」・「アート」をインテグレーション(Integration)として捉えて来た私達は、生成AIの出現を、さらに高度な大変有効な「術」として活用し、芸術「アート」を産出してゆく事でしょう。しかし、次のようなことが表出しないでしょうか。例えば、障がい者のアートの活動を見てみましょう。「アール・ブリュット(生の芸術)」や「アウトサイダー・アート」と位置付けられている彼らのアートは、「天衣無縫」美学の言うところの身体から生まれる個の感性の力量作品です。そこに、生成AIを用いる事で、張彦遠( ちょうがんえん)の明示する画の六法を補完、遂行することは可能となるでしょうが、彼らの作品の本質である身体感覚から生まれる、「天衣無縫」な個別的形相(haecceitas:へクセイタス)を代償として失う事になりはしないでしょうか。

 

油絵具からリキテックスという簡易な絵の具が出現したことによって、誰もが自由に色彩豊な画を描く事が可能になったように、生成AIを活用することで、誰もがより自由にアートを創出できる様になったのは喜ばしい事ではありますが、「アート」の本質である「こころの思い」、写意の創出の喪失を危惧しています。生成AIは、私達の世界の繋縛を解くツールで有ると同時に、私達の心の世界を繋縛するものでもあるのです。かような中、アート活動の身体と感覚との乖離の無い「人と人との繋がり」によるインテグレーション効果によるシステムは、「人間を人間たらしめるもの」人間の営みである 「art」を介しての私達人間によって組み立てられた秩序を持つ美しく快い芸術として、まさに「藝」(「藝」の原意:種子・苗を植えつけるという言葉)術のごとく、種撒かれ「恵」として「希望」として進化して行く感性(aisthesis)を失うことが無いようにと心から願う所存です。

キインセイドウ

コッポウヨウヒツ

オウブツショウケイ

ズイルイブサイ

ケイエイイチ

​デンイモシャ

インテグレーション(Integration)

て機能させること。「補完」」「統合」「統一」「融合」

へクセイタス(haecceitas)

「この」を意味するラテン語からの造語。中世のスコラ哲学者ドゥンス・スコツスが提唱した「このもの性」(thinness)を意味する概念 「まさにこの存在」「あるがままの姿」近代的概念は「個性」に相当する

鎌田 恵務(かまた けいむ)

​彫刻家 1961年生まれ。

kamata keimu Work File 

https://www.keimu.com/

 

2017年 新宿副都心「Peaceー平和の手」設置。

 

ボランティア団体「こども夢基金アートプロジェクト」設立。

https://kodomo-yume.wixsite.com/kodomo-yume-art

 

障がい者の自立支援組織「だんだんボックス」設立にも関わる。​​

 

Art & Art  ウェブサイト公開
 

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