Vol.13
La Manoの手しごと
高野 賢ニ
クラフト工房 La Mano 施設長
2023.November
1992年に1名の実習生からはじまったLa Manoは、2022年に30年の節目を迎えました。メンバーは39名に増え、人の数だけさまざまな〝手しごと〟を担う〝つくり手〟がいます。〝染める手〟〝織る手〟〝縫う手〟〝描く手〟‥‥‥ほかにもたくさんの〝手〟が加わり、かたちづくられてゆくのがLa Manoの手しごとだと感じています。
手しごとを担っているメンバーは、自閉症、ダウン症、発達障害、精神障害などの障がいをもつ方々です。障がいをもつ方が手しごとをするのは、容易にはいかないこともあります。しかし、私たちは、障がいのある方が手しごとを行うことを価値とするのではなく、それぞれが得意とする手しごとの技術や表現、感性を持って価値としたいと考えます。
その価値を見出すことは、一朝一夕には成しえません。それには、彼らを支えるスタッフが日々、メンバーとともに手しごとに向き合うこと、うまくいったこともいかなかったことも受け止めて、季節の移ろいのように少しずつ少しずつ進むことが大切です。そんな手しごとから生まれた製品や作品を手にしたみなさんに、うれしさや楽しさを感じていただけたなら、私たちは幸せです。
また、La Manoのものづくりには、地域の方々の〝支える手〟が欠かせません。織り上がったマフラーの房を結ぶ、藍染めの生地にアイロンをかける、染め上がった鯉のぼりを縫製する、染料になる植物や糸になる綿花を育てる。‥‥‥ひとりひとりの手が、ここでの手しごとを支えています。
LaManoの手しごとの先には、目には見えないたくさんの〝つなぐ手〟もあります。一緒にものづくりをする手、店舗やオンラインショップで製品を販売する手、作品の展示や紹介をする手、染織展に訪れてくださる手、活動の一助にとファンクラブや寄付による支援をしてくださる手など、さまざまな手によって私たちの手しごとは次の手へとつながってゆきます。
〝つくり手〟だけでなく、〝支える手〟や〝つなぐ手〟、それから〝つかう手〟、いろいろなかたちで関わるみなさんが幸せになるーーそれがLa Manoの目指すものづくりです。
La Manoとは〝手〟を意味することばです。これまでの30年に感謝するとともに、LaManoはそれぞれの〝手〟を大事にしつづけます。これからの10年、20年も、みんなでLaManoの〝手しごと〟を広げていきましょう!
クラフト工房La Mano 施設長 高野賢ニ
<La Mano 30周年記念冊子より>
高野 賢ニ(たかの けんじ)
クラフト工房La Mano施設長1976年生まれ。
福島県出身。
学生時代に東京で染色を学ぶ。
2000年クラフト工房入社。
染色担当の指導員として、障がいのある人たちとのものづくりを行う。
2006年にはアトリエ(アート活動)を始動し、メンバーの絵を使ったプロダクトの企画のほか、
外部と共同でものづくりを進めている。